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「やせ薬」という表現の危うさ~糖尿病治療薬に関する広告規制

経営コラム

「やせ薬」という表現の危うさ~糖尿病治療薬に関する広告規制

美容関係のクリニックでは、人の「美」を作るために尽力しています。そして多くの人がスリムな体型を求めている現在においては、美容クリニックがこれに応えようとするのはごく自然なことでもあります。
ただ、美容クリニックでこの希望を叶えようとする場合、注意しなければならない点があります。そのうちのひとつが、「やせ薬」です。

「やせ薬」という表現の危うさ~糖尿病治療薬に関する広告規制が始まっています

「やせ薬」という表記の危うさを知る

スリムな体型になりたいと願う患者様のために、本来は糖尿病の治療薬として使われるべき薬「GLP-1受容体作動薬」を処方することを考えた人もいるかもしれません。血糖値を下げる効果と同時に、食欲を抑制する薬効があるこの薬は、「やせたい」と願う人にとって心強い味方となるからです。

しかしこの薬は、言うまでもなく、Ⅱ型糖尿病のための治療薬にすぎないものです。糖尿病の薬としては国から承認を受けていますが、ダイエット目的の薬としては承認を受けていません。日本美容医療リスクマネジメント協会では、「GLP-1受容体作動薬は、ダイエット薬としてはその効果や安全性が立証されていない」と取り上げています。

保険がきかない以上、ダイエット目的でGLP-1受容体作動薬を使おうとする場合は、当然自由診療の扱いになります。言い方を変えれば、GLP-1受容体作動薬をダイエット目的で処方することは、完全には禁止されていません。

ただ、このような「ダイエット薬として認証をしていない薬」の投与に対して、国がまったくの無関心でいるかというとそうではありません。2024年には、ダイエット薬としてのGLP-1受容体作動薬の在り方を見直すべきであるとして厚生労働省がこれを取り上げています。

医療広告ガイドラインに違反する美容クリニックは決して少なくない

GLP-1受容体作動薬を美容目的で利用する場合、殊更に「やせる薬である」「これを使えば大きく体重を落とせる」などのようなことを強調した広告を出すことは許されていません。これは医療広告ガイドラインに反するからです。実際、2021年では50件の美容クリニックが、さらに2022年には72件の美容クリニックが、医療広告ガイドラインに違反したとして指摘を受けています。

GLP-1受容体作動薬などのやせ薬を処方する場合は、美容クリニックは、患者様に対して、丁寧な説明を行い、また理解を求める必要があります。
厚生労働省が出した「「医療広告ガイドライン」及び「美容医療サービス等の自由診療におけるインフォームド・コンセントの取り扱いについて」の改定について」では、特にGLP-1受容体作動薬が大きく取り上げられています。

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そしてその処方時には、
・有効性と安全性を説明するときには、個人差があることを患者様に対して直接言わなければならない
・即日、すぐに美容手術やGLP-1受容体作動薬によるダイエットを行うように強要することはしてはいけない
・費用や解約条件(美容手術)については、対応にあたる前にしっかり説明しなければならない

とされており、医療従事者にはこれを厳守することが求められています。

またさらに、「(糖尿病の薬としては承認を受けていても、ダイエット薬としては)未承認の薬であること」「どのような経路で入手したのか」「副作用の情報」「もし健康被害が起きても、国に医療費の支給は求められないこと」を説明するべきだとされています。

美容クリニックにおいて「やせ薬」はなじみ深いものですが、その処方には慎重さが求められます。

私たちKSメディカルサポート株式会社では、先生方の医療経営のお手伝いをしています。お困り事があればどのような事でもご相談ください。

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ご自分のクリニックで思いどおりの医療を提供できるようになるのはこの上なく幸せなことだと思います。 独立してからのクリニック運営には細かいところで面倒やリスクがつきものですが、 正しいやり方で運営する限り何も心配することはございません。